ラグビートップリーグ初の女性レフリー 高橋真弓さん

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ラグビートップリーグ初の女性レフリー

©Y.Hayashi

高橋真弓さんは、ラグビー選手として、7人制日本代表、15人制日本代表を経験し、現在は女子ではただ一人、日本協会公認女子A級のレフリーライセンスを取得している。2017年、トップリーグNTTコミュニケーションズ 対 東芝ブレイブルーパス戦に女子として初めてアシスタントレフリーを経験した。女子レフリーの第一人者として、女子ラグビーの未来を見つめている高橋真弓さんに話を聞いてみた。

自粛期間

「日本ラグビー協会主催の試合等が中止になり活動が自粛になっている状況ですが、自分で出来るトレーニングはやっています。ランニングやフィジカルトレーニングを中心に行なっています。ウエイトトレーニングは怪我予防であまり重量を上げずにやっています。レフリーも体力を落としてはいけないので。」

日本協会公認女子A級は日本で一人

「2016年に女子A級が創設され、現在女子のA級レフリーは私一人になっています。今までは、現役を引退した選手がレフリングを学んでいましたが、公認ライセンス制を導入し、レフリーの育成に力を入れています。現在の女性レフリーは全体で30人前後です。そこに所属して活動させて頂いています。」

ラグビーとの出会い

「父親がいろいろなスポーツを見るのが好きなので、ラグビーの存在は知っていました。自分がやるとは思っていなかったのですが(笑)。10歳の時に、兄と一緒にラグビースクールに見学に行き、私の方がラグビーにはまってしまいました(笑)。その時に、タックルする体験をさせて頂いたのですが、それがとっても面白かった。その時の影響もあるのか、選手時代のポジションはバックスのセンター(12.13番)をやっていたのですが、相手を抜き去るより、タックルする方が好きでしたね(笑)。女子ラグビーは、チーム全体の人数が少ないので、複数のポジションをこなさなければいけません。スタンドオフ(10番)もやりました。スタンドオフは、ゲームメイクをやらなければいけないので難しいポジションですね。」

大学時代に日本代表

「世田谷レディース(日本で最初の女子ラグビーチーム)に所属した後に、日本体育大学に入学し、卒業後また世田谷レディースに戻りました。大学1年生の終わりの時に、U23のセブンズ日本代表(7人制)が立ち上がりました。そこに呼んでもらったのが一番最初の代表のキャリアです。まだその頃は、代表愛称の『サクラフィフティーン』とは呼ばれていませんでしたね(笑)。代表は常に意識して目指していましたので、U23から代表に入れたのはありがたい事でした。

選手からレフリーへ

「2010年に膝の怪我をしてしまい、選手への復帰を目指す上でも、ルールの再勉強をしたいと思いました。その頃は日体大の選手兼コーチもやっていました。一緒にコーチをやっていた先輩がレフリーの資格を持っていて、リハビリ中に、チーム内のアタック、ディフェンスの練習中に笛を吹かせてもらったのがきっかけとなりました。

レフリーはプレー中のラックやモールで、選手達の一番近い所に立っているので、非常に怖いです。レフリング中にも大怪我をした事もあります。やはり安全とは言えないですね。

レフリングでは、選手経験がとても生きています。ボールを追うだけでなく、試合全体を気にかける様にし、選手の邪魔にならない様なポジショニングを心掛けています。

レフリーは依頼されれば、連日で試合をこなす事があります。例えば7人制では大会が2日間なので、1日にメインレフリー3試合、アシスタントレフリー3試合、計6試合こなすこともあります。選手は3試合なのですが(笑)。基本的に、セルフメンテナンスで怪我予防と疲労回復を務めています。控え室で持参のストレッチポールを使ったり、脚を上げて疲労を回復させたりしています。結構大変なんです(笑)。」

プリベントコール。

「選手との試合中の対話は選手が主役ですので、目立ちすぎない様にしますし、言い過ぎもいけませんし、出来るだけ的確に、選手が聞きやすいタイミングを心掛けています。例えば、タックルした直後ではなかなか選手もコミュニケーションが取れないので、少し時間をおいて話しかける様に心掛けています。

ラグビーならではのレフリング、反則を予防するための『プリベントコール』というのがあります。これは、選手に対してプレーを継続させ、反則をさせない様に声がけをする事です。」

試合前のレフリーミーテイング。

「基本的には、ウォーミングアップは選手と同じなのですが、試合前にレフリー同士でミーテイングして、今日の試合のレフリングで気をつける事の確認を必ずします。反則予防のため、チームの傾向の話もしますし、このようなプレーをするかもしれないので、注意して見て欲しい、という事をアシスタントレフリーに伝えたりします。練習試合等でチームへの帯同は依頼されれば行く時もありますが、基本的には日本協会や関東協会から派遣された試合で笛を吹きます。」

ニュージランド(NZ)レフリー留学。

「カンタベリー州のクライストチャーチへ、3ヶ月ほどレフリー留学させて貰いました。カンタベリー協会にお世話になり、研修や平日のトレーニング、休日には試合の担当レフリーをやらせて頂きました。ホームステイ先が、当時のクルセイダーズ(スーパーラグビー10回優勝を誇るNZの強豪チーム)のバックスコーチをしていた家でした。お礼に日本料理を食べさせてあげようと、作ったのですが、普段から食べられているみたいで、私が作るより美味しかったんですよ!(笑)。

もっと料理勉強しないといけないな、とレフリーを学ぶために留学しているのに思いました(笑)。

日本女子ラグビーの現状。

「私の現役の頃に比べて、スポンサーも増えましたし、カテゴリー別の試合も増えて発展してきています。現状の選手達は、日本代表を目指してラグビーをやるケースが多いです。でも日本代表だけがラグビーではないので、もっと底辺を広げて、ラグビーをエンジョイ出来るカテゴリーがあると良いと思います。

また、競技人口が少ないので、少ない人数でプレー出来る7人制の試合が多くなってしまっています。もう少し15人制の試合が増えてくると盛り上がるのかな、と感じています。

7人制の女子日本代表はオリンピック種目になっています。オリンピックに向け、各地で合宿を行なっていて頑張っていますよ!非常にチームが良くなって来ているので、期待しています!練習試合があれば声をかけてもらい、レフリーの担当させて頂いています。」

今後の目標。

「今は大学の二部のリーグのレフリング担当をしていますが、一部のリーグの担当を出来る様にしていきたいです。女子ワールドカップのレフリングは年齢的に難しくなって来ているので、私の下の代を育てて行きたいと思っています。」

 

©Y.Hayashi

高橋真弓プロフィール
1987年1月25日生まれ。 10歳からラグビーを始め、府中ジュニアラグビークラブ、世田谷レディース、日本体育大学出身。7人制、15人制の日本代表。日本協会公認レフリー女子A級。

Mr.Kosei

スポーツをこよなく愛す、謎の格闘家。歌って喋れて戦える、をモットーに日々精進して生活しています。

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