ハイブリットレスリングから総合格闘技へ、そしてキックボクシングを経てプロレスのリングへ。プロレスラーとして光り輝いている伊藤崇文に現在の状況をインタビューしてみた。
伊藤崇文プロフィール
1972.6.21生まれ
大阪市出身 176センチ 76キロ B型
94年4月パンクラス入門
95年1月パンクラスデビュー
95年7月パンクラス第1回ネオブラットトーナメント優勝
05年4月全日本キックボクシングデビュー
11年3月プロレスリングZERO1参戦
13年9月パンクラス20周年記念大会に出場
15年3月パンクラスの金網大会(デカゴン)に出場
現在は、レッスルワン、ZERO1、ちがさきプロレス、他プロレスに参戦中
コロナ禍での活動
「もうすぐ48歳になります。総合格闘技、キックボクシングのリングに上がってきましたが、現在はプロレスで多数の試合に出場しています。コツコツと頑張っていますよ(笑)。
コロナ禍でジムも閉まっていましたので、マスクを付けてランニング等はしていましたが、外出は控えていたので、家で出来るトレーニングを中心に行っていました。普段は運動習慣がついていますし、体力を落とさないため、心拍数を上げる練習等を行いたいのですが、緊急事態宣言の中、遠出してのトレーニングは出来ないので、今回はストレスが溜まりましたね。今まで身体を酷使続けてきたので、少し身体を休息させ様と気持ちを切り替えました。
試合も出来ない状況ですし、指導しているジムも閉鎖していました。その中でトレーニングしたい人のために、リモートを使いオンラインで基本中心の講習をジムの会員向けに試みました。自身のトレーニングも含めて、いろいろ試したことで、ジムが再開した時に応用出来れば良いと思っています。
コロナの状況もだいぶ良くなってきましたので、自分自身精神的も大分解放されてきた気がします。ファンは試合を観たいと思いますし、選手は試合をしたいし、興行も6月ぐらいからのスタートになります。」
トレーニング
「30歳半ばぐらいから、激しく練習すると疲れが残り、回復しづらいと意識し始めました。今は練習を追い込む時と、練習量を落とす日を分けています。昔みたいに、毎日練習で追い込むことはしない様にしています。
ただ、試合が近いと練習して身体も精神も追い込まなくては、という気持ちに今でもなりますね。練習量を落として調整に当てると、自分自身に後悔の念が出たりします(笑)。だいぶ気持ちが割り切れるようになってきましたが(笑)。でも常に鍛えていないと精神的にダメなタイプですね。身体を動かしていると、自分自身の納得感で精神的にも安定しますよね。」
パンクラス
「パンクラスに1994年に入門して、翌年の1995年にデビューしました。プロレスのリングには2011年から上がっています。
もともと小学生の時からプロレスラーに憧れ目指していました。新日本プロレスの猪木さんのファンでした。その後、UWF(注1)が一大ブームとなり、UWF解散後の高田延彦さん1991年に旗揚げしたUWFインターナショナルに憧れ、UWFインターの入門テストを受けましたが、テストに落ちてしまい。。
元新日本プロレスの船木誠勝さんと鈴木みのるさんが1993年にパンクラス(注2)を設立しましたので、パンクラスの入門テストを受けて合格する事が出来ましたが、僕の中ではパンクラスはハイブリットレスリングというプロレスでしたので、格闘技団体という意識はそれほど無かったです。」
(注1)UWF正式名称はユニバーサル・レスリング・フェデレーション、ユニバーサル・レスリング連盟。1985年9月に活動休止した第1次と、1988年4月に旗揚げし1991年1月に解散した第2次の2期に分かれる。プロレス界に一大ムーブメントを起こし、若いファンから支持される。
(注2)ハイブリッドレスリングを掲げた、日本の総合格闘技団体。1993年設立。
合宿所
「以前のパンクラスでは練習生は全員合宿所での生活になり、管理された生活の中、練習も大変厳しく、自由が何もなくなります。今時珍しく、世間離れして非常に厳しい合宿所生活なので、自分自身の目の前の現実がガラリと変わってしまいます。そのため入門試験にせっかく合格しても、すぐに辞めていく人が多かったですね。自分も今また合宿所生活やれ、と言われたらちょっと考えます(笑)。」
プロとして
「いろいろな道場生が入門試験に合格してパンクラスに入りましたが、今まで見てきた中で、プロとなってリングに上がれるようになる人は、自分自身の意識がしっかりしている人、ちゃんと行動を起こして練習や雑用が出来る人、またはまるで何も知らない純粋な人ですね。中途半端な意識や気持ちの人は難しいですね。
例えば入門テストも、試験メニューが出来る出来ないではなく、最後までやろうとする貫く意識が重要です。リングに上がりお客さんの前で戦うためには、そういう意志の強さ必死さは絶対に必要です。
現在の総合格闘技の技術体系は確立されてきおり、昔より選手が強くなっています。でも今の選手は強くて上手いですが、気持ちや感情の表し方が、戦いの中で見え辛いですね。
昔の選手は個性が強く、よりファンの記憶に残りやすいのは、試合の中で、心の中から湧き上がるものが出ていたからだと思います。そういう選手は個性が強いですよね。格闘技は勝敗だけでなく人対人の勝負なので、ファンはそこに魅力を感じているのだと思います。」
今後の活動
「今は興行会社もイベント会社も本当に大変だと思います。プロレスの興行に関しては、プロレスリングHEAT-UPの道場を使った無観客での動画の配信マッチが始まっています。8月ぐらいからはファンも会場に入れるのではと思っています。勢いをつけて頑張って行きたいですね。
プロレスファンは新しい人が増えて来ています。昔の良きプロレスを知らない人達が増えていますよ(笑)。今のプロレスと昔のプロレスは違う、という人もいますし、今のプロレスが受けているなら今が正しい、という考え方もあります。プロレスには古いも新しいもなくて、勝負が重要という考え方もあります。いろいろな見方があって良いと思います。その中で選手は何をして行くか。
自分は選手としてのキャリアは長いですが、新しい技や考え方もしっかり取り入れていかないといけないと思っています。そのままでは、ただの古いおっさんになってしまうので(笑)。
好きで入った道なので、今後もプロレスのリングに上がり続けて行きたいです。また、いろいろな興行のリングに上がり戦いたいですね。そのためには良いコンディションを保ち、怪我のないように精進していけたらと思っています。」
10数年ぶりの再会という事で、男としてどの様に変わっているのか楽しみな取材でした。昔と変わらない伊藤崇文もいたり、また新たな目標に向かっている伊藤崇文に会えたり。時間が足りなくて短くなってしまいましたが、次回はロングインタビューをしたいと思います。