サントリーサンゴリアスのスクラムを進化させる青木佑輔スクラムコーチ
早稲田大学、サントリーサンゴリアスのフッカーとして日本のフォワード支えてきた男。2018年に引退し、サンゴリアスのコーチとして次の高嶺に挑戦している青木佑輔さん。コロナ禍の中での来季に向けての話を聞いてみた。
青木佑輔プロフィール
所属チーム サントリーサンゴリアス
ポジション フッカー
1983年6月19日 生まれ
出身地 東京町田市
出身校 國學院久我山高校、早稲田大学
日本代表キャップ 30
コロナ禍の中での活動
「緊急事態宣言中はチーム活動もできない状況で、クラブハウスも立ち入り禁止でしたが、解除後には自主練で少人数のグループごとに決まった時間を割り振りトレーニングが開始されました。今はユニット練習も行うようになってきています。全体練習は夕方の3時ぐらいから行なっていますが、選手同士の密が出来ないように、バックス陣とファワード陣はトレーニングを分けて進めています。
コロナ禍の中でもラグビーを進めていかなければいけません。出来る限りのトレーニングは続けていかなければいけませんし、現時点では目標となる試合が無い事は辛い状況です。そのような中でも、家で毎日コツコツトレーニングしている人と、そうでない人との差は出てきます。サントリーの選手達もクラブハウスに来て、いつでも試合が出来る様にモチベーション高くトレーニングを積んでいます。」
スクラムコーチとして
「コーチとして難しく感じている事は、選手とコミュニケーションをとりながら考えや答えを伝える事です。選手は思っている事をフィードバックしてくれて、それについて解決策を考え与えるのがコーチングなのですが、言語化して伝えることが非常に難しいです。前監督の沢木敬介さんに言われたのが、自分の中に基準を作り組み立てて行けば、選手にちゃんと伝わると教わりました。コーチとしての1年目は、コーチングで頑張ったという事でなく、やらなければいけない事を学ばせて頂いた状況でした。」
高校でのコーチング
「母校の國學院久我山高校に教えに行く事もあります。選手に教えるときは、理解していないものとしてスタートしないといけません。これくらいのことなら理解しているだろ、と勝手に教える側が思ってしまうと、選手のしっかり理解できず、間違った解釈をしてしまう事もあります。選手に教えたことが出来ないのは、指導する側の責任だと思っています。久我山高校には3日間通わせて頂いたのですが、1日目は自分自身でかみ砕いて教えたつもりだったのですが、選手達には上手く伝わっていないと感じました。翌日からはノートにキャラクターの絵を描いて動き方を教えました。ラグビーは団体スポーツなので、自分の隣がどう思っているのか、どう動くのかを理解していないと、自分自身の力を100%発揮できないスポーツです。悩みながらプレーしていると力は発揮出来ないので、悩んでいる部分をしっかり解決しクリアにしてあげることが大切だと思っています。」
教員免許
「学校の教師になりたかった夢もあり、引退して教職の道に歩もうと決めていました。引退に関しては、チームの方に僕の方から話をしました。大学時代に教職の資格をある程度まで取っていたので、現役の最後の一年間は残りの教職課程を受け教職免許を取得しました。選手をやりながらだったので、めちゃくちゃ忙しかったです。東海大学で講義を受けていたのですが、電車で片道2時間ぐらいかかり、遠かったですね(笑)。90分の授業を受けに行くのに往復で4時間です。
コーチに関してはチームの方からオファーを頂き大変有難かったですが、いつか教員になって頑張ってみたいと思います。」
日本代表
「小さい頃から日本代表に憧れがあり、代表になりたいという気持ちが強くありました。選出された時は非常に嬉しかったです。
日本代表も一つのチームとして活動しています。僕の場合、元々選出されている方とコーチ陣から信頼されている度合いが違いました。なかなか試合の出場機会がなかった時もあり、自分自身で『試合に出られないのなら、もういいや』という気持ちになりかけた時もありました。代表の試合は少ないですし、コーチ陣から、『なんでチャンスがもらえないか考えろ』と言われたりしていて、辛い時期もありました。
2007年のW杯の時はバックアップメンバーで出られませんでしたが、お陰様で2011年のW杯は出場することが出来ました。」
プロップとフッカー
「フォワードのフロントロー(1.2.3番)は、みんなお喋り好きだと思います(笑)。チームラウンジで食事をしていてもプロップ(1.3番)は、おしゃべりで周りをよく盛り上げています。フッカー(2番)はどちらかというと、話を受けてあげてますね(笑)。どこのチームもフッカーの人は、プロップの様にそんなにお喋りな人はいないと思います。僕はずっとフッカーですが(笑)。
フロントローは常にコミュニケーションを取っているので、プロップが話をしてくれた方がプレーし易いですね。また言葉だけのコミュニュケーションだけでなく、スクラムを組み合わないと分からないコミュニュケーションもあります。スクラム時は肩のくっ付き合っているコネクションがとても大事なのですが、どうバインドを取ったら一番強く組めるか等、お互いの肌感覚でコミュニュケーションを取る事も重要です。」
フィットネステスト
「ラグビー選手のフィトネスは年々向上してきています。フィットネステストでの目標ターゲットタイムが非常に厳しく設定されています。その目標値を超えないと週末もう一度エキストラトレーニング等があったりします。少しでも身体を休めたいので、頑張ってテストをクリアするのですが、そうするとさらに次のターゲットタイムが上がります。このストレスは本当に大変でした。常に限界まで力を出さないと怒られる状況だったのですが、それでもこのプレッシャーが、自分を成長させてくれたと思います。特にエディー・ジョーンズさんが監督1年目の時は、本当に厳しく陸上部や軍隊並みの練習でした。」
厳しい監督
「一番厳しい監督はエディー・ジョーンズさんでした。沢木敬介さんも厳しく怖い人でした。沢木さんは厳しいのですが、沢木さんが現役の時に一緒にプレーしているので、先輩後輩の関係がありましたので話しやすかったです。エディーさんは、そういう関係がなく監督として就任しているので、めちゃくちゃ恐怖でした(笑)。」
来シーズンに向け
「来年一月からトップリーグが開幕します。コロナ禍でまだどの様になるか分かりませんが、一人でも多くのファンの方達が試合会場に来て応援して頂けると選手達にも力になります。選手達のぶつかり合いを生で観てもらうと、身体の底からエナジーが沸き上がってきて、元気になって帰ってもらえると思います。ラグビーにはそういう力があると思っています。是非体感して下さい。
去年のトップリーグシーズンは、コロナ禍の影響で6試合消化した時点で終了してしまいました。チームとしては勢いが出て来た所でのリーグ中止となり、非常に残念な結果となりました。そのままチームがどの様に進化いくか楽しみでしたが、その勢いを持続して来シーズンに臨みたいと思います。
応援よろしくお願いします。」