格闘技をこよなく愛するTVプロデューサー
若林美樹(わかばやし みき)さん。
TVプロデューサーとして数多くの番組を制作。
コロナ禍の中で
「テレビ番組制作も大きく変わって、今までにないような感じになっています。以前では考えられなかったテレワークの導入や、Zoomを使用してのリモート会議、また収録でもリモートを取り入れています。ソーシャルディスタンスを考えて、スタジオの人数も驚くほど少ないですよ。あんなに会社に毎日行っていたのに、コロナによっていろいろと考えさせられますね。
緊急事態宣言中は自宅でガーディニングをやったり、日頃やっていないプライベートな映像を編集したり、イラストレーターやってみたり、ウクレレを弾いたりしていました。ほとんど在宅でした。まとまって運動は出来ませんでしたが、毎日ストレッチはやっていましたよ(笑)。
父親がちょうどこの時期に入院してしまい、面会出来ない日々で。また、一人暮らしの母にも、コロナ感染防止のために会わないようにしていました。最初の頃は、かなり神経を使いました。」
仕事は女子プロレス関係を目指し
「フジテレビに入社したきっかけは、女子プロレスなんです。クラッシュギャルズが大好きなのですが、きっかけは中学生の時に、たまたまTVで女子プロレスの試合を観た事なのです。極悪同盟ダンプ松本(注1)とクラッシュギャルズ長与千種(注2)の大田区体育館での戦いを、日曜の夕方放送していたTVで観て、あまりにも衝撃的で身体に電流が走るくらい、人生観が一気に変わりました。その時プロレスラーになりたいと思いました(笑)。ダラダラ夕方TVを観ていて、こんな世界があるんだ、私もやらなきゃ、と思ったんです(笑)。
番組のロールテロップを見たら制作がフジテレビでした。その時のディレクターの方の名前が出ていて、この人と一緒に仕事をしたい、フジテレビで働きたいと思ったんです。本来は女子プロレスラーになりたかったのですが、その当時はクラッシュギャルズが大人気で女子プロレスラーの試験も、身長が160センチ以上とか体重も何キロ以上とか規定があり、私は身体が小さくてちょっと無理かなと思い。それでも家のベッドでブリッジとかして鍛えていたんですが(笑)。なんでもいいから女子プロレスに関わりたい、そうなると、プロレスラーになるかメディア側になるかと思ったんですよね。レスラーは身体が小さくて厳しい・・・中学校の時の思いを捨てきれず、プロレスラーになれないなら、番組を作る方になろう!とフジテレビの入社試験を受けました。ベースボールマガジン社の週刊プロレスへの就職も考えたのですが、就職が氷河期の時代に当たってしまい、採用がなかったんですよ。家に週刊プロレスは山のようにありますよ(笑)。」
注1)1980年代、全日本女子プロレスで活躍したダンプ松本を中心とするヒールユニット
注2)全日本女子プロレスを中心に活躍した、長与千種とライオネス飛鳥によるタッグチーム。当時の女子プロレスにおいて絶大な人気を誇った。
格闘技経験
「プロレスラーになりたかったので、中学1年生から空手を習いました。ありがちなパターンなんですが(笑)。ずっと空手を習っていたのですが、大学時代は沖縄空手が元になっていて、倒れながら蹴る動きなどある躰道部(たいどうぶ)の体育会に入部しました。その後フジテレビに入社してからは、フジテレビの中に極真空手の本部直結の道場があり、フジテレビ極真空手部に入部しました。
その後、近所のムエタイジムにも通い始め、本場のタイにも習いに行きました(笑)。日頃の忙しさや、日常を忘れられるので、トレーニングする事が好きだったんだと思います。まだリングに上がる夢は捨ててないです(笑)。」
平成の格闘家
「学生の時の様に足繁く楽しく格闘技を見ているわけでなく、数年前までは、少し格闘技から離れていたのですが、RIZNという番組を担当するようになり、また最近の格闘技を観るようになりました。昭和のプロレスや格闘技を見て来ましたが、平成・令和の選手は全然違うキャラクターですね。新しいタイプの選手達はYouTubeをやっている選手も多く、表現の仕方が違います。
那須川天心選手や朝倉兄弟(朝倉未来選手・朝倉海選手)、RENA選手など、今の選手はパッと見ると格闘家に見えなかったりするのですが、いざリングに上がるとやっぱり違う雰囲気を醸し出す、不思議な魅力がありますよね。道ですれ違っても、本当に格闘家なのか一目見ただけでは分からないくらいなのに、試合ではもの凄い戦いをする選手ばかりです。」
リングへの目線
「以前は好きな選手を応援する、という試合の見方でしたが、段々とどんな流れでこの対戦カードは組まれているのか?次の展開はどうなるのか?など、自分なりに考えて観る様になりました。その予想を裏切られる様な展開になった時にしか、面白さを感じなくなってきてしまったのです。
会社に入ってからは、リングの中の選手を追うだけでなく、リングサイドにどんな人が観戦に来ているのか?どんな人がセコンドについているのか?観客はどんな目で試合を観ているのか?その人達の表情や反応を見ながら、俯瞰的にプロレスを観る様になってしまいました。大きな会場では、入場などでどの様な演出をしているのか?小さな体育館や広場では、どの様に選手達は闘い、観客を沸かせているのか?など、ある意味、プロデューサー目線で観てしまっています。」
プロレス・格闘技の人気復権
「女子プロレスの人気、女性ファンの人気を戻すのは、私が当時憧れていた様に、女性達もこの様になりたい、そういうイメージを作れる選手やコンテンツが出てくるともっと広がってくるのかな、と思います。
私がキックボクシングや極真空手の世界大会や、K-1が始まる前の格闘技大会などを観に行っていた頃は、男の人ばかりで女性の観客は少なかったですね。こんな男性の多い場所大丈夫かな、と思いながら観に行っていましたが、女性が入りやすい会場作りや、女性特有のキラキラした要素を作れば、きっと足を運びやすくなると思います。1回観に行けば本当に面白いし魅力的です。今、女性の方も格闘技を始めている方も増えていますので、そういう意味では今後はいろいろな可能性があると思っています。
男子のプロレスだとイケメンも増えていますし、スタイルが良いし、色気のある選手も多いです。素敵な筋肉美を観る、というそちらのお目当ての方が増えています。男性もそういうレスラーに憧れる、というのもありますよね。
格闘技・プロレスを盛り上げていくために、私に出来る事があれば、何でもやってみたいと思っています。」
キープ・ママ・スマイリング
「キープ・ママ・スマイリングというNPOの活動も行なっています。入院している病気の子どものお母さんたちを支援する活動です。
小児病楝に入院中のお子さんに付き添っているお母さんたちは、ご飯を作る時間もないし、食べる時間もない状況です。そういうご家族たちに食の支援などをしている団体です。コロナの影響で、なかなか面会も出来ない状況もありますが、その様な中でもご家族たちを少しでも支援していければと思っています。友人と一緒に立ち上げた団体で、じっくりと活動を広げていっている状況です。」
キープ・ママ・スマイリング HP
http://momsmile.jp/